職人紹介
貴重な素材が入荷しました
貴重な革素材が入荷しました。
国産のカーフ(生後3ヶ月~6ヶ月の子牛の革)です。子牛なので当然革も小さい。
どれくらい小さいかを成牛革(栃木レザー)と比較して確認してみましょう。
- カーフ・・・約65d㎡前後(丸革)
- 栃木レザー・・・約240d㎡前後(半裁)
※d㎡はデシメートル。10cm×10cmで1d㎡。
丸革は一頭分の革。半裁は一頭の牛の革の半分。
つまり、一頭で見ると成牛革のサイズは500d㎡前後です。個体差はありますが、成牛革はカーフの7倍から9倍くらいの大きさになります。
カーフは成牛に比べてかなり薄いです。薄いということは弱いのかというとむしろ逆で、薄い分繊維が密な為(大人になっても肌の毛穴の数は変わりません。その為大きくなればなるほどキメが粗くなります)、厚みを薄く揃えた場合の強度は成牛革を凌ぎます。
見た目の美しさだけでなく実用面においても優れた素材で、特に薄く漉いた革を使用する小物や靴において高級素材として重宝されています。
そんな素晴らしい素材なので積極的に使いたいところなのですが、こういった小さなカーフをなめすタンナーは世界中探してもほとんど残っていないということなのです。今回入手した素材も状態の良いデッドストックです。
カーフの製造から手を引く理由は、原皮が調達しにくくなったことや薬品の値上がり、環境問題に配慮しながら製造を続けることの難しさなどいろいろありますが、最たるものが“儲からないこと”だというのは非常に残念なことです。
安くて良い製品がいつでも手に届くところにある現状は本当に素晴らしく、自分もその恩恵に預かっています。しかし、その代償として一部の魅力的な製品はどんどん影を潜めているように思います。そういった製品は、得てして高価で、簡単には手に入らない場合も多いです。しかし、その分手にした時の喜びや使う楽しさはひとしおです。
良い品が消えていくというのは、粗悪な品ばかりを買い求め、本当に良い物に目を向けてこなかった我々消費者にも責任の一端があるのではないかと思います。
一消費者として、一作り手として、良い品を支持することで、世の中に良い製品が増えていくことに少しでも協力できればと考えています。
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